広報スタッフが得意な漫画を生かして
【病院広報アワード】離職率が20ポイントも低下
【webサイト部門】最優秀賞
医療法人平成博愛会世田谷記念病院(東京都世田谷区)
事務長 手老航一さん
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世田谷記念病院がウェブサイトのリニューアルを行ったのは約1年前。それまでは、サイトの訪問者がすぐに離脱するようなサイトだった。リニューアルと時を同じくして、病院はもとより医療業界について全く未経験の広報スタッフを採用した。
「サイトの改修に当たって最初に心掛けたのが、親しみやすく柔らかいトーンでデザインを統一すること」と話す手老さん。サイトを訪れた人に今までよりも分かりやすく、楽しく世田谷記念病院や病院スタッフのことを知ってもらうための取り組みを始めた。
その1つが、サイト内の漫画「せたがやコラム」。人々にあまりなじみのない回復期やリハビリのことを分かりやすく伝えるため、入職して間もない広報スタッフがシナリオ作成から絵コンテまで手掛けるコンテンツだ。もともと漫画を描くのが得意だったそのスタッフの特技を大いに生かすことができた。
更新の頻度は2週間に1回程度。最近では「リハビリ病院の看護師って?」「当院の地域連携室って?」「栄養部ってどんなところ?」などのタイトルで、主人公のキャラクター「広報ちゃん」の疑問に、登場するスタッフが分かりやすく答えながら各部署の組織や取り組みを紹介していく連載物となっている。
「医療業界や病院の勤務経験がなかった広報スタッフが、世田谷記念病院のことを素人の視点で描き上げているからこそ読みやすい漫画になっているのではないか」と手老さんは話す。業界未経験の広報スタッフがひたむきに病院や仲間のことを調べながら発信していくことが、結果的に現場のスタッフと地域の住民や患者とを結びつけている。
同病院を知ってもらう2つ目の取り組みが、「せたがや職員カルテ」。医師をはじめ、看護師や薬剤師、リハ職など勤務スタッフのパーソナルな部分や仕事内容、同病院の理念にもかかっている、それぞれの「じぶんを生きる」とはどういうことかなど、どんな人が働いているかを分かりやすく紹介している。
「せたがや職員カルテ」は職員の採用や離職率の防止にも役立っている。採用に関してはグループのYouTubeチャンネルを用いて作った動画も功を奏し、サイトのリニューアル前は30%を超えていた離職率が、今では10%前後までに減少している。
手老さんは、「サイト上で当院のことをある程度知った上で応募してくれる求職者から面接の段階でより深く志望動機を聞くことができるので、ミスマッチの減少につながっている」と手応えを感じている。
今年度に入り、同病院では隣に3階建ての福利厚生施設を建設した。当初は職員の休憩や組織の一体感を図る目的で建てたが、2階のスペースでは患者や地域の人が参加できるイベントの開催など多くの人が集う機会をつくっていく予定だ。「サイトをきっかけにできたつながりを今後はリアルの場で。地域の人や患者さんと職員が交わる場所にしていきたい」と手老さんは語る。
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